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日本の生乳流通を支える「指定団体制度」とその課題

日本の酪農業は、毎日新鮮な生乳を安定的に消費者へ届けるために、多くの工夫と努力が重ねられています。その中でも「指定団体制度」は、生乳流通の要ともいえる重要な仕組みです。本記事では、この制度のメリットとともに、こだわりの生乳が消費者に届きにくいという課題にも触れ、理解を深めていきます。


 

指定団体制度とは?

指定団体制度は、生乳の流通を効率的に進め、酪農家の経営を安定させるために設けられた仕組みです。生乳は毎日生産される一方で、腐敗しやすく長期保存が難しいという特性があります。そのため、個々の酪農家が乳業メーカーと直接交渉することは、価格面や輸送面で不利になりやすく、安定した収益を得ることが難しくなります。


ここで「指定団体」の役割が重要になります。指定団体は地域内の酪農家から生乳の販売を一括して引き受け、乳業メーカーとまとめて価格交渉を行います。これにより、酪農家一人ひとりでは難しい価格の維持や安定供給が実現されます。また、生乳を一括して輸送することでコスト削減も可能となり、効率的な流通が実現されています。


指定団体制度のメリット

1、価格交渉力の向上

指定団体が一括交渉することで、安定した価格での取引が可能になります。個別交渉では難しい有利な条件を引き出すことができ、酪農家の経営を支えています。


2、輸送コストの削減

生乳は液体であり、輸送コストが非常に高くなりがちです。しかし、指定団体がまとめて輸送を行うことでコストを抑えることができます。


3、供給調整

需要と供給のバランスを取るために、余剰生乳を他の地域やメーカーに分配することが可能です。これにより、生乳の廃棄リスクが低減されます。


4、生産への専念

酪農家は、価格交渉や輸送の手配といった煩雑な業務から解放され、生産活動に集中することができます。


こだわりの生乳が消費者に届きにくい現実

指定団体制度は多くのメリットをもたらす一方で、課題も存在します。その一つが「合乳」という仕組みです。合乳とは、複数の酪農家の生乳を混ぜて均一化することを指します。これにより品質のばらつきが抑えられる一方で、個々の酪農家のこだわりや特色が薄れてしまうデメリットがあります。


例えば、「グラスフェッドミルク」(放牧で自然の草だけを食べて育った牛から採れた生乳)や「オーガニックミルク」など、特別な飼育方法や品質を誇る生乳も、合乳されてしまうことで他の生乳と同じものとして流通してしまいます。その結果、消費者がその違いを認識しづらくなり、酪農家のこだわりが正当な評価を受けにくい状況が生まれます。


課題解決に向けて

この課題を解決するためには、指定団体の仕組みを維持しつつ、こだわりの生乳を適切に市場へ届ける仕組みも同時に整備する必要があります。


  • 特別区分での販売:こだわりの生乳は、一般の生乳とは別のルートやブランドで販売する仕組みを拡充する。

  • 消費者への認知:グラスフェッドやオーガニックといった生乳の特徴を消費者に広く認知してもらう。

  • 小規模販売支援:酪農家自身が小規模ながら直接販売できる体制や支援を強化する。

持続可能な生乳流通のために

指定団体制度は、生乳の安定供給と酪農家の経営安定に欠かせない仕組みです。一方で、その中で生じる「こだわりの生乳が埋もれてしまう」という課題にも目を向ける必要があります。


今後は、指定団体制度を活かしつつ、多様な消費者ニーズに応えられる仕組みを整え、こだわりの生乳がしっかりと評価される市場環境を作ることが重要です。


私たち消費者も、日々口にする乳製品の背景にある酪農家の努力や指定団体制度の役割を理解し、応援していくことが求められています。



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