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ミツバチがいる牧草がグラスフェッドに理想的

グラスフェッドミルク(牧草と放牧で育てた牛のミルク)の栄養や風味には、牛が食べた草の成分が直接反映されますので、どのように育てられた草なのかが大事です。特に、健康を意識する消費者は、無農薬で育てられた草や有機肥料で育てられた(化学肥料を使わずに育てられた)牧草によるグラスフェッドに注目しています。その際に、「草地にミツバチがいるかどうか」が、良いグラスフェッドミルクを見極める物差しになります。


            <北海道 西興部村 萩原牧場の風景 2022年7月>


牛が創る草原

ヨーロッパのイメージとして定着している「草原」は、実はその多くが自然にできたものではなく、酪農を通じて作り上げられた草地です。牛が草を食べ、牛が歩いて土を耕し、堆肥で養分が補給された結果として、丈の短い草が広がる草原になっていくのです。


ちなみに、牛は斜度30度を超える急斜面(人間の目線では「崖」です)でも登り降りできますので、牛が放牧された高い丘や山もやがて草原になっていきます。特に、急傾斜の放牧地では牛がいつも歩きやすい同じ道を通って移動するため、草原には筋がいくつも走っています。このような牛道(うしみち)が描かれたヨーロッパの風景画に出てくる草原は、何世紀にもわたって放牧が続いた証拠です。


ただ、そのようにして作り上げられてきた草地も今や、牛まかせではなく酪農家によってきちんと管理されています。様々な牧草(タンパク質を多く含む草やカロリーが比較的豊富な草)がバランスよく牛の餌になるように考えられて栽培されています。


農薬を使わない工夫

なかでも無農薬にこだわる草地では、雑草が増えないように貝殻由来のアルカリ素材などを使って、土壌が雑草の好む酸性に傾かないように工夫されています。これは同時に、タンパク質を多く含むクローバーなどの草が良く育つ土づくりにもつながります。逆に見れば、クローバーがたくさん育つ草地には雑草が生えにくいため、農薬を使う必要性に乏しいのです。


このようにして作られたグラスフェッドミルクに対して消費者から、「農薬を使わないで育てた草を食べた牛のミルクは安心して飲める」との声が聞かれます。確かに、多くの国で無農薬野菜などが「オーガニック」と評されて、慣行農業(一般的な農業)の野菜よりも高値で販売されているように、無農薬には特別な価値が認められています。ですのでミルクについても、無農薬の牧草によって育てられた牛のミルクに同様の価値が認められてもおかしくありません。


なお、日本政府も将来にむけて、無農薬の野菜等の栽培を促進していく構えです。農林水産省が昨年打ち出した「みどりの食料システム戦略(※1)」では、2050年までに「化学農薬使用量(リスク換算)の50%低減を目指」し、同じく「耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を25%(100ha)に拡大すること」を目標に掲げてます。

(※1)農水省「みどりの食料システム戦略」:https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/


ミツバチがいる草原はナチュラル

ところで、草地が無農薬かどうかを判断する材料として、ミツバチの行動が重要です。と言うのも、ミツバチは環境に敏感な生き物であり、農薬をまいた土地にはミツバチが集まりにくいことが知られているためです。


実際、農林水産省は農薬がミツバチに与える悪影響について、警鐘を鳴らしています(※2)。農薬を散布すると、その場所からミツバチがいなくなってしまう可能性が高まり、ミツバチによる受粉が必要な作物に被害が及ぶこともあるそうです。


したがって、ミツバチがいる場所は農薬が使われておらず、ミツバチが住みやすいオーガニックな場所であるということを示しています。特に、蜂蜜を採取するプロである養蜂家はそのような場所を熟知しており、ミツバチの巣箱を設置することもあります。


ちなみに、西興部村の萩原牧場のクローバーは夏になると白い花を付け、その花の蜜を求めてたくさんのミツバチが牧場に集まってきます。この環境が欲しかった本州の養蜂家も牧場を訪れ、多くの巣箱を草地のそばにセットしていきます。


ミツバチが飛び回るのを見るとちょっと怖いですが、グラスフェッドミルク作りにとっては理想的な環境です。


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