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グラスフェッドの条件



                <北海道西興部村 萩原牧場 2022年6月>


餌の違いがミルクを分ける

ミルクの成分は、牛が食べている餌により異なります。特に、飼料に含まれるたんぱく質の割合は、たった2%の違いでもミルクの味や栄養価に違いを生み出します。さらに、ミルクを濃縮したバターやチーズの段階になると、どのような飼料を用いたのかが大きな差として現れます。


たとえば、日本の多くの酪農現場で用いられている配合飼料(トウモロコシ、大豆、麦などが原料)に含まれるたんぱく質(粗たんぱく質、CP)が約20%であるのに対して、グラスフェッド酪農の飼料である青草(短放牧草)には25%前後のたんぱく質が含まれています。グラスフェッドミルクが味わい深い、あるいは相対的に栄養価が高いと言われる理由のひとつが、ここにあります。


したがって、美味しいミルクを得るために、牛にふんだんに青草を食べさせることが理想なのですが、そこには難しい問題があります。広大な牧草地が必要になるのです。


本格的なグラスフェッドには広大な草地が必要

牛に青草を餌として与えるためには、牛を放牧させるのが合理的です。土に生えた青草を牛が直接食べるのが鮮度の高い餌を摂るには最適です。しかも、これこそが牛本来の自然な姿であり、牛にストレスがかからず、ミルクの味や栄養にも良い影響を与えることが期待されます。


とはいえ、牛は1日に50~60kgにも及ぶ量の青草を食べる(※)ため、これだけの青草を確保することは容易ではありません。理想的には、1頭当たり1ヘクタール(100m×100m)の土地が必要と言われています。仮に、牛50頭を飼えば50ヘクタール(東京ドーム約11個分)の広大な土地を確保しなければなりません。


したがって、栄養価が高くおいしいグラスフェッドミルクを作ろうとすると、これだけの広大な土地が必要になるため、グラスフェッドによる酪農ができる場所は、日本では限られることになります。その結果として、国産の本格的なグラスフェッドミルクは希少な存在となってしまうのです。




もちろん、これだけの広さの牧場でなくても、乾燥した草を買ってきて餌にすれば、グラスフェッドミルクとしては成立します。特に、青草ならば50~60kgが必要であるのに対して、水分を抜いた草ならば約15kgで済むため(※)、酪農の作業効率が上がるというメリットがあります。


ただ、実際にミルクを飲んでみると、大地に生えた新鮮な青草を餌にした場合と、刈り取って乾燥した草を餌にする場合では味わいが異なるのは当然です。


常に新鮮な青草を餌にするために

なお、牛を放牧だけで育てる場合には、先述のような規模の草地が確保できなければ、牛は十分な栄養を摂ることができず、ミルクの味や栄養価が低下します。具体的には、牛を日々移動させて新たな青草を与えるだけの規模の草地が必要です。


牛は一日で広い面積の草を食べますので、翌日もその場所にとどめることはできません。別の場所に連れて行って、そこに生えた新たな草を食べさせる必要があります。さらに、その翌日は1日目、2日目とは異なる場所に連れて行くのです。そうしなければ、牛に新鮮な草を与え続けることができません。


草地を日々変えていく間に、最初に行った場所に新たな草が生えてきたら、そこに戻ってきます。このように牛の放牧場所を日々移動することによって、牛が常に新鮮な青草を食べる工夫がなされた結果、美味しくて栄養価の高いグラフフェッドミルクを得ることができるのです。


広大な草地のグラスフェッドミルクが最適

以上でご説明した通り、牛に新鮮な青草を毎日ふんだんに与え、またストレスなく育てるためには広大な牧草地が必要です。逆に、広大な牧草地で育った牛だからこそ、栄養価の高い風味の良いミルクや乳製品が期待できるのです。


配合飼料を餌とした牛と牧草を餌とした牛のミルクには違いがあります。さらに、牧草を餌とする牛のミルクでも、どのような草を与えて、どのように育てるかにより違いがあります。


ただ、本来の味わい深く栄養価の高いミルクや乳製品を期待するのであれば、誰もが想像する通り広大な草地で育った牛のミルクが最適です。













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